「激増する「いらない相続」」(その2)
牧野知弘『負動産地獄』より

Reading Journal 2nd

『負動産地獄 その相続は重荷です』 牧野知弘 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

第1章 激増する「いらない相続」(その2)
   「老老相続」~偏在する高齢者財産と受け取れない子供
   相続登記義務化がもたらす悪夢
   都市農地の相続で路頭に迷う深刻な事情
   税がかからなくとも悩ましい相続

「老老相続」の問題

高齢化が進んだ日本では、消費にあまり積極的でない高齢世帯ほど金融資産や不動産を多く持っている。そして本来消費意欲が旺盛な30代40代の世代は、住宅ローンなどの負債や教育費が重くのしかかっている。親の世代が長生きになればなるほど、子供への財産の引継ぎの時期が「先送り」されてしまう。
現在の平均年齢から相続する子供の平均年齢は50代となり、すでに住宅などを購入し、子供もある程度落ち着いているため、相続されたお金の多くは消費に回らず老後資産とて貯蓄したままになってしまい、消費額が上がらない構造になってしまっている。(第6章で、この対策について具体的にふれるとのこと)

国も早めの資産移転を促すために、

  • 孫などの教育資金贈与・・・・一人につき1500万円まで非課税
  • 子供や孫の住宅の新築、取得、増改築資金贈与・・・・500万円~1000万円まで非課税
  • 子供や孫の結婚、子育て資金として一人につき最大1000万円まで贈与を非課税

などの、対策をしている。

相続登記義務化の問題

所有者不明土地問題の解決のため、不動産登記法が改正され、2024年4月より施行される。このような問題がなぜ起きたかというと、相続の際に多くの相続人が、所有権移転手続きを行わないことによる。土地の登記は第三者対策であったためこれまでは義務ではなく、さらに、登記の際に登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)がかかるため登記を行わないケースが多くあった。そのような相続が繰り返されたた現在では、所有者不明の土地が社会問題化している。そのため、国は相続に際して登記を義務化した。

今回の改正はこれだけにとどまりません。24年4月以前に相続した不動産についても相続登記が義務化されたのです。つまり、24年以降になると、以前に相続した土地や建物についても3年以内に相続登記を済まさなければならなくなりました。(抜粋)

都市農地の相続の問題

今後厄介な相続となる可能性が高いものに都市部の郊外にある「都市農地」である。都市部の多くの土地は、市街化調整区域に指定されているため、通常であれば宅地並みの固定資産税や都市計画税が課税される。都市部にある農地では、住宅地並みの課税がされると農業を続けられないため、自治体により一定の条件を満たせば、農地なみに課税を引き下げることを認めている。このような土地を「生産緑地」という。
このような制度の適用を受けるための要件として、1992年の生産緑地改正法では、登録後その土地で農業を30年間にわたり継続しなければならないという営農義務が課せられた。
この生産緑地について最近問題になったのは、多くの生産緑地が2022年に登録期限の30年の満了をむかえ、以降住宅ちなみに税金を払うか売却しなければならなくなった。そこで国は2018年に新たに特定生産緑地制度を制定して対象の農地を特定生産緑地に登録すれば10年延長でき、その後も10年毎に延長できるとした。この改正によりこの問題は解決したと多くの関係者が安堵した。

しかし、この安堵の裏側には、所有者たちの間にこれから頻発する相続の問題が抜け落ちています。都市農地の所有者の多くが高齢化しています。(中略)

高齢化した都市農地の所有者が特定生産緑地制度に登録しても、その息子や娘の多くはサラリーマンであるため農業を継ぐ意思のある人は、極めてまれになっている。

生産緑地を相続することは、この農地をどうするかの決断を迫られることになります。(抜粋)

生産緑地を相続しても農業をする意思がない相続人は、売却という選択をしがちである。しかし、その場合は膨大な額の相続税が掛かり、もしスムーズに売却できない場合は、相続税の支払いにも苦労することになる。

税がかからないが悩ましい不動産の問題     

第1章の最後にとして、いらない相続、相続すると悩まし不動産について書かれている。
戦後70年がたち、現在は団塊の世代の相続が始まっている。この世代になると一般庶民でも家を持ち退職金や年金もあるため親世代よりもはるかに豊かな資金を持っている。
この資産が次の世代に引き継がれるが、世代が変われば価値観も変わり、両親が立てた郊外の一軒家、地方の親の実家などは「あまりほしくない」資産となっている。そのほか、「古びた別荘」、「老朽化したマンション」これらも子供世代には見向きもされない資産となっている。

これから起こる相続の多くはかなり悩ましいものとなります。変な不動産をつかむと、その管理や処分で苦労することになるからです。親や祖父母の時代では思ってもみなかった価値観の変化が、これからの相続では起こってきます。(抜粋)

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