「鏡に映らない自己を描く — パリ」(その1)
木下長宏『ゴッホ<自画像>紀行』より 

Reading Journal 2nd

『ゴッホ<自画像>紀行』 木下長宏 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

II 自問する絵画 — 自画像の時代
3. 鏡に映らない自己を描く — パリ(その1)

ここより、ゴッホのパリ時代。そして、ゴッホが自画像を最も多く描いた時期である。この部分は、この本のメインの部分でページ数も多いため4回に分けてまとめる。
まずは、ゴッホが恐る恐る描き始めた最初期の自画像について。


図15 「自画像」1887早春

著者はまず、ゴッホの最初期の自画像から話を始めている。それは、スケッチブックの縦長に使って表と裏に黒いチョークでスケッチ風に描いたものである[図11 「自画像」1886年早春、黒チョーク、紙] [図12「自画像」1886年早春、黒チョーク、紙]。この自画像は、アントワープもしくはパリに着いた直後に描かれた最初の自画像であるとしている。

鏡に映っている自分の顔が、それを描いている自分を見返しているが、そのまなざしは、いかにもおどおどしている。(抜粋)

このようにして、ゴッホは恐る恐る自画像を描き始める。しかし、次の自画像[図13、1886年春、油彩、キャンヴァス]ではそのような初々しさは払しょくされていると著者は、言っている。この自画像は、オランダ時代と同じ色彩感覚で茶褐色の絵具を中心に構成感覚でまとめられていて、遠くレンブラントの自画像を念頭に置いてあるものである。図13の自画像と同じころに片手にパレットを持った自画像[図14 1866年春、油彩、キャンヴァス]も描いている。
その後に描かれた図15[1887年早春、油彩、キャンヴァス]と図16[1887年早春、油彩、キャンヴァス]の自画像は、茶褐色系で統一されているが、背景の処理や顔の作り方に、光と色彩の関係を考える色違いが観察できるとしている。この時期のゴッホは花瓶に生けた花をたくさん描いていて、印象派の考え方を学ぼうとしている。

図13から図16の四つの自画像は、そんな、パリの騒々しい芸術環境のなかに投げ出されて自分自身を振り返っている、内省的自画像である。(抜粋)

次に著者は図17[1887年春、鉛筆、紙]と図18[1887年早春、鉛筆/ペン、紙]の自画像のスケッチを示している。この図18は図19[1887年早春、油彩、キャンヴァス]の下絵として描かれたものであるとしている。そして、この図17,18を最後に自画像の素描はないとしている。そして図20[1887年早春、油彩、キャンヴァス]を最後にゴッホの自画像は、茶褐色系から明るい色彩に変わっていく。

図11「自画像」1886早春Searching now.
図12「自画像」1886早春Searching now.
図13「自画像」1886春http://www.vggallery.com/painting/p_0208a.htm
図14「自画像」1886早春http://www.vggallery.com/painting/p_0181.htm
図15「自画像」1887早春http://www.vggallery.com/painting/p_0180.htm
図16「自画像」1887早春http://www.vggallery.com/painting/p_0208.htm
図17「自画像」1887早春Searching now.
図18「自画像」1887早春Searching now.
図19「自画像」1887早春http://www.vggallery.com/painting/p_0178v.htm
図20「自画像」1887早春http://www.vggallery.com/painting/p_0263a.htm
図11-20

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