聞くことのちから、心配のちから(その4)
東畑開人 『聞く技術 聞いてもらう技術』 より

Reading Journal 2nd

『聞く技術 聞いてもらう技術』 東畑開人 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

第3章 聞くことのちから、心配のちから(その4)

前回・その3では、今日のところは、クラインマンのヘルス・ケア・システムの話から、ケアの中心は「民間セクター」であり、心理士が行うカウンセリングは、まわりの人たちや正常な方の本人に、どのようことが起きているかの翻訳を行うことが解説された。そして、「民間セクター」の身近な人たちの「世間知」を再起動させることが思や役割としていた。それを受けて今日のところ“その4”では、「世間知」の正体、つまり「ふつうであること」の重要性について解説される。では、読み始めよう。

「ふつう」という言葉と世間知

「世間知」の正体は、「ふつう」という言葉が使われるときに働いている知である。
「これは、ふつう・・・・だよね」とか「ふつうは、・・・・・なんだ」とかそういう認識、つまり「みんな」が共有している認識や知恵を教えてくれるのが世間知である。

ストレスがかかって苦しくなると、しばしばこの「ふつう」がわからなくなる。そのとき、その状態を「ふつう」ではないことを知らせ、「ふつう」を回復する手伝いをするのが心理士の仕事である。

ここで重要なのは、この世間知や「ふつう」というものは、ユニバーサルなものでなくローカルなものであることである。われわれは、その人が所属する世界によって、この「ふつう」は違ってくる。そして,

ちがったworldを生きている人に「ふつう」を押し付けると、傷つけることになります。(抜粋)

そして、この「ふつう」は毒にも薬にもなる。
この「ふつう」を、その人の今の形を否定し、別の形へと変えようとするとき、その「ふつう」は毒となる。

これに対して、この「ふつう」が薬になるのは、抱擁と肯定のために使われるときである。
要するに、この「ふつう」を否定のために使われるとき、その人の孤独を深めるのに対し、「ふつう」を理解のために使われるとき、その人の少しずつ変化させることが出来る

時間の力

しかし、この理解には、時間がかかりすぐに行動に現れることはほとんどない。

心の変化は弱火でとろとろ煮込むように、ゆっくりと起こります。(抜粋)

しかし、この時間が人を変えていく。
人は理解されず否定されているときは、着実に人をそこなうが、人間的に見守られている時間には、少しずつ心を修復していく。

時が経てば経つほど事態が悪化していくときもあれば、時間をかけることで事態が好転していくこともある。
その分岐点は、その時間を他者と共有しているか否かです。(抜粋)

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