『聞く技術 聞いてもらう技術』 東畑開人 著
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
聞いてもらう技術 小手先編 日常編
今日のところは、「聞いてもらう技術 小手先編」である。これまでの話では、結局、話が聞けないのは、自分自身が聞いてもらえない時である、という結論になった。そのため「聞いてもらう技術」が必要である。そこで、まず著者は小手先としての「聞く技術」について解説している。「聞いてもらう技術 小手先編」は今回、日常編、次回に緊急事態編とまとめる事にする。
聞いてもらう技術とは?
まず著者は、この「聞いてもらう技術」は、「うまくしゃべる技術」ではないと注意している。「うまくしゃべる技術」は、自分の強みを伝えるテクニックだが、この「聞いてもらう技術」は、
情ないところをわかってもらうための技術です。(抜粋)
この時必要なのは、賢い頭ではなく、戸惑う心である。
この聞いてもらう技術は「心配される技術」にほかならず、環境を変質させて「聞いてもらう」のがその本質である。
この「聞いてもらう技術」は、臨床心理学の教科書には、当然載っていない。ここでは著者の臨床での蓄積や経験からの小手先を示すとしている。この小手先は下の2つに分かれる。
- 日常編・・・・・聞いてもらうための関係を作るために日常から心掛ける技術
- 緊急事態編・・・ほんとうに困ったときに聞いてもらう技術
そして、日常編は、
ふだんからまわりを耕しておく技術と、緊急時にSOSを出すための技術と言い換えてもいいでしょう。(抜粋)
① 隣の席に座ろう
大学の講義室やフリーアドレスの会社、何かの講演会などがあった時に、思い切って顔見知りの隣に座ってみる。何かを喋る必要はなく、座っているだけでいい。
これも3回目くらいになると、顔なじみ感がでて、ちょっとしたおしゃべりが始まる。
② トイレは一緒に
これは、トイレに限らず、昼休みの歯磨きや喫煙所でもよい。基本的には個人で完結することを、なぜか一緒に行くというのがミソである。
一人で出来ることを一緒にやっていると、ついつい無駄話をしてしまう。
③ 一緒に帰ろう
さらに段階を上げて一緒に帰るのも良い。帰るときにバッタリ会って微妙な雰囲気になるときもあるが、そんな時は「この駅から帰ります?」と聞くのも良い。帰り道は気が抜けて普段できない会話になることもある。また、車で助手席に座ったら、寝たりしないで話をするのがよい。
④ ZOOMで最後まで残ろう
これは応用編であるがZOOMなどのオンラインミーティングでは最後まで退室せずにいるのが良い。残りがニ、三人になった時に突然話が始まることがある。これは、昔は廊下でやっていた。
⑤ たき火を囲もう
聞いてもらう技術のポイントは、気まずい時間に少し耐えて、一緒にいることである。
その点で最強なのは、たき火である。たき火を囲んで横にいるとふと言葉が漏れ出るものである。
⑥ 単純作業を一緒にしよう
同じ理屈で、おすすめなのは単純作業である。なんでもよいが、何かをしているんだけど、頭は空っぽのときに、聞いてもらうが発生しやすい。
⑦ 悪口を言ってみよう
聞いてもらう時間が発生したら、勇気を出して悪口を言ってみるのもよい。
悪口というのは、自分が嫌だった体験を話しているわけで、それは賢い頭でなく、戸惑う心の言葉だからです。(抜粋)
悪口、愚痴、いやだったことの話から、それまでの賢い頭同士の話から、一気に戸惑う心同士の会話に変わっていく。
日常編のまとめ
これら、聞いてもらうための小手先は、根底に体のコミュニケーションがある。気まずい時間に耐えて、自分の体を他人の体と一緒に置いておく。そうすると一見無駄に見える時間の積み重ねが、人と人を仲良くさせてくれる。
聞いてもらう技術とは、日常の中で赤の他人を軽い友人に変える技術なのだと言えそうです。(抜粋)
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