自己概念とモチベーション
鹿毛雅治『モチベーションの心理学』より

Reading Journal 2nd

『モチベーションの心理学 : 「やる気」と「意欲」のメカニズム』 鹿毛雅治 著 
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

第4章 成功と自尊心―自信説(その4)
   4 自己概念とモチベーション

自信があればモチベーションは上がるが、モチベーションの方向性を考えると必ずしも自信満々が望ましいとは言えない。自信があるために危険を過度におそれ、モチベーションの方向がタスクからエゴに向かうこともある。このような心理現象は「自己概念=自分自身をどう認識しているか」「自尊心=(自分をどう評価しているか)」という要因が深く関わっている。
4節では、「自己概念」を5節では、「自尊心」が取り扱われている。
今日のところは「自己概念」である。最初に「自己をめぐる3つの動機」を説明した後、「自己概念」について解説され、さらに、「自己価値理論」「自己不一致理論」が説明される。


われわれには、「自分自身」に関係する3つの動機がある。

  • 自己知識動機・・・・自分の能力や性格に関する情報を進んで求め、自己を理解しようとする傾向
  • 自己価値動機・・・・自分のポジティブなイメージを作り上げたり、それを維持したりしようとする傾向。これには、自分に関するポジティブな情報の快感覚を高めようとする側面(自己高揚動機)と自己に関するネガティブな情報によってもたらせる不快感を避けようとする側面(自己防御動機)の両面がある(パフォーマンス目標)など)。
  • 自己改善動機・・・・「かくありたい自分」、「かくありべき自分」に近づこうとする傾向。これには、理想的な自分になるために努力するとい接近動機づけの側面と「なりたくない自分」「なるべきでない自分」を避けるという回避動機づけの両面がある。

「自己概念」は、この自己知識動機に基づいた情報収集の結果として形成された知識構造(セルフ・スキーマ)であり相互に結びついた統合的な構造をしている。

この「自己概念」は、自らの体験や環境解釈を通じて形成され、特に重要他者の評価原因帰属(原因を推論する思考)の影響を受ける。また、自分と他者を比較する(社会的比較)により形成される。

ここでのポイントは、自己概念がモチベーションを規定するデータベースとして機能するという点だろう。つまり、自己概念は自分に関する価値づけや自分自身に対する感情の影響を及ぼすことを通じて、当人のモチベーションを左右する。(抜粋)

この自己概念に関連する心理メカニズムとして「自己価値理論」「自己不一致理論」がこの後に説明される。

自己価値理論

自分の努力する姿を他者に見せると、失敗した時に自己価値に傷がつく可能性がある。「努力しても失敗したのは当人に能力がないためだ」という原因帰属を促すためである。このように原因帰属を手がかりとして、自己価値動機に基づきモチベーションを説明するのが「自己価値理論」である。

努力することは達成の必要不可欠条件であるが、一方努力する姿を他人にさらしては、結果として失敗しまうと無能の人とみなされる危険性がある。このように努力することは諸刃の刀であり、そこにジレンマが潜んでいる。

そこで、われわれは自己価値を維持し自分の無能さを露呈させないために「失敗回避方略」を利用し、成功を求めて努力するよりも、失敗を回避することに工夫を凝らす。具体的なやり方は次の3つが代表的である。

  • 1.「自分が無能であることをその場で露呈しないようにする」(例、知ったかぶりなど)
  • 2.「セルフハンディキャッピング=(失敗を外的な要因のせいにする)」(例、体調が悪いなど)自分に自信がない場合はこの方略を取りやすい。
  • 3.「目標をあえて低く設定する」
これらの失敗回避方略は、あくまでその場しのぎにすぎない。これらの方略をとったからといって、実際にパフォーマンスが向上するわけでも、学習や習熟が促進されるわけでもないため、中長期的にみれば当人の自己価値に何のプラスにならないのである。(抜粋)

自己不一致理論

「自己不一致理論」は、「かくありたい自分」に近づこうとする自己改善動機に関連して提唱された。この理論では自己概念を、「領域」と「観点」の2次元に整理し、さらに「領域」を「現実自己」「理想自己」「義務自己」の3つに、「観点」を「自分自身」「重要な他者」の2つに分けて、以下の6種類に分ける。

  • 1.現実自己/自分自身:(現実の自分は〇〇だ:現実状態)
  • 2.現実自己/他者(他者からみた現実の自分は○○だ)
  • 3.理想自己/自分自身(理想の自分は〇〇だ)
  • 4.理想自己/他者(他者からみた理想の自分は○○だ)
  • 5.義務自己/自分自身(自分は○○すべきだ/〇〇であるべきだ)
  • 6.義務自己/他者(他者は自分に〇〇すべきだ/〇〇であるべきだと思っている。)

これらすべては、当人の主観の産物である。むしろ自己不一致理論のポイントは、その主観の内容こそが本人のモチベーションを左右すると考える点である。

この理論では、①「現実状態」以外は、「自己指針」として働き、現実状態とのズレを低減するためにモチベーションが生じるとしている。そしてそのズレの種類は特定の感情を引き起こす。

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