「モチベーションの心理学」に学ぶ(前半)
鹿毛雅治『モチベーションの心理学』より

Reading Journal 2nd

『モチベーションの心理学 : 「やる気」と「意欲」のメカニズム』 鹿毛雅治 著 
[Reading Journal 2nd:読書日誌]

終章 「モチベーションの心理学」に学ぶ(前半)

やっと終章「「モチベーションの心理学」に学ぶ」に到達した。これまで、モチベーション研究を俯瞰すると同時に「目標説」「自信説」「成長説」「非意識説」「環境説」の各理論を整理し、やる気と意欲という現象の諸側面が解説された。

以下では、あらためて全体を振り返り、本書のまとめとしたい。(抜粋)

と著者は言っている。

今日のところ前半ではモチベーション理論を俯瞰してまとめが書かれている。そして次回の後半では、モチベーションについて「達成」関する考察から「居る意欲」という概念に発展させる。


モチベーションの理論の背景には、「人間観」がある。それは、比喩(メタファ)を用いて「○〇モデル」と呼ばれることがある。

  • 物体モデル」・・・人を環境側にあるプル要因によってのみ動かされる受動的な存在とみるモデル。人は誰かによって動かされる「コマ」という考え方。
  • 動物モデル」・・・人を生理的欲求や快楽原則に支配される「生き物」に見立てるモデル。「外発的動機づけ」はこのモデルに根差している。
  • 機械モデル」・・・動力(エネルギー)によって機能するしくみ(システム)として人間のモチベーションを説明するモデル。動因という考え方を原型とした理論はこのモデルに立脚する。
  • 情報処理モデル」・・・「機械モデル」の発展型。人をコンピュータ(情報処理システム)になぞって考えるモデル。人の行動は意味を理解や解釈、合理的な目標設定によって、合目的的に生じると考える。「目標説」の諸理論はこの範疇にある。
  • 主体性モデル」・・・これは人間を自ら行為する「エージェント」とみなす人間像に基づくモデルである。「欲求階層説」や「自己決定理論」などの「成長説」(第5章)の諸理論はこの系譜となる。

これらのモデルは、一対一で対応しているわけでなく、一つのモデルでモチベーションを理解できるわけでもない。

モチベーション心理学の歴史で明らかになったことは、人間の行為の「共通性」「多様性」である。

共通性

まず「共通性」については、モチベーションは、人間が持つ生理的欲求や心理的欲求によって生じる現象である。その欲求が、「目標」を生み出し、その目標の追及するプロセスでは、信念、感情、行動傾向性といった要素で構成される「心的表象(mental representation)」が機能する。

心的表象とは、たとえば、ダイエットしたい・すべきだ・できそうだといった信念(価値:第3章1節、期待:第4章2節、)、ダイエットによって生じる快・不快の感情(第6章など)、食習慣のような行動傾向性(習慣:第6章2節)が、「ひとまとまり」になったセット(心理的統合対)を指し、それが実際の行動を生じさせたり、方向づけたりするわけである。(抜粋)

多様性

ただし、目標を達成するプロセスは人によって異なるココ参照)。これが「多様性」であり、モチベーションは、十人十色である。
そして一人の個人の中に複数の性質があるという「多面性」にも注意が必要である。人は、領域ごとに違う「領域レベルのモチベーション」を持ち、「一人十色」でもある。
さらにモチベーションは、環境によって大きく左右される(ココ参照)。環境がモチベーションに与える影響も個人差がみられ(ココ参照)これも「十人十色」である。

ここで、著者のまとめを長く引用する。これははじめにに書かれた問い、すなわち

  • 「どうしたら自分がやる気になるか
  • 「どうしたら他者をやる気にさせられるか
以上のようにみていくると、研究が進展すればするほど、モチベーションという心理現象の複雑さが明らかにされてきたということがわかる。魔法のようにやる気を高める「ハウ・ツー」などないはずだ。
では、モチベーションの研究は役に立たないのであろうか。そうではない。本書で紹介してきた諸理論は、モチベーションという心理現象に、多様な側面があることに気づき、さらにはそれを複眼的かつ統合的に認識するためのフレームであり、ひいては我々のトータルな人間理解を深めることに寄与する「ツール」である。モチベーションの心理学は、われわれの問題解決に役立つリソースのひとつとして有効なのである。(抜粋)

次回の後半では、著者は、モチベーションについて「達成」関する考察から「居る意欲」という概念に発展させている。

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