「自己確証」
坂本真士『ネガティブ・マインド』より

Reading Journal 2nd

『ネガティブ・マインド : なぜ「うつ」になる、どう予防する』 坂本真士 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

第3章 ネガティブ・マインドの仕組み―自己没入の中で起こること
3.3 自己確証

3-1節では、目標の設定の仕方と落ち込みの関連、3-2節では、気分が認知に影響を与えることが説明された。本節では、「認知が行動に及ぼす影響」について解説する。「自己確証」と「自己成就的予言」について取り上げている。


「自己概念」とは、「自分がどんな人間なのかについての考え」である。
著者は、まずはこの自己概念の測定するテスト [Who am I テスト] を紹介している。

この自己概念が安定している事は、本人や周囲の人たちにとって都合がよく、もしこれが不安定だと、その人の行動がコロコロと変わり、行動を予想することができずに周囲に混乱をきたすことになる。

この自己概念は安定している方がメリットがあるのだが、どうして簡単に変動しないかについては、私たちは「自己確証動機」=「自己概念を安定させるような動機」を持っていて、その動機により自己確証的な行動や情報処理をするからと考えられていると説明している。
ここで「自己確証」とは、「自己概念を確証、確認してくれるような社会的現象を求め、実際の社会的環境と自分の心の中にそれを作り出すように行動したり解釈したりすること」とである。

つまり、人は自己概念を確認するように情報を処理し、自己概念と一致する情報が得やすいように環境を変えたりして、自己概念が変動することを避けようとする。

そうなると、自分はダメだと思っている人や落ち込んでいる人の場合、どういうことになるだろうか。(抜粋)

次にうつ的な人の自己確証の実験が示され、その結果の解釈を次のように説明している。

前述の研究が示しているように、うつ状態のときに人は、自分自身に関するネガティブな情報を受け入れやすくなっているようだ。・・・中略・・・ここで肝心なことは、落ち込んでいるときや自信喪失時にネガティブな自己の側面を意識してしまうが、それを自己確証のような認知の仕組みのためにネガティブな部分だけが選択的に意識されているだけであって、現実には自分に関するポジティブな側面はたくさんあるということである。(抜粋)

次に「自己成就的予言」について説明している。
「自己成就的予言」とは、「人がこのようなことが本当にあるだろうと予期すると、無意識のうちに予期に適合した行動をとってしまい、結果として予期された状況を作り出してしまうというプロセス」である。

私たちは、失敗した時のショックを避けるために、初めから悲観的な予想を立てることがあるが、このようなプロセスがあるため、著者は悲観的な予想について次のように注意をしている。

「どうせダメだ」という悲観的な見方は、客観的に見れば十分に成功の可能性がある場合でも、実際にネガティブな結果を呼び込んでしまうことがある。悲観的な予想を立てがちな人は、うまくいかなかったときには自己評価が保たれるかもしれないが、実際に失敗を招く「自己成就予言」の可能性があることを十分認識しておきたい。(抜粋)

しかし、この悲観主義は、一概に悪いものと決めつけることもできないとして、著者は「対処的悲観主義」に触れている。
「対処的悲観主義」とは、「悲観的な考え方を課題への動機づけにして積極的に課題に取り組む」ことである。

対処的悲観主義者は、

普通の悲観主義者と同様、悲観的な予想を立てるが、想像される悪い結果が起こらないように(また起こってしまっても対応できるように)、事前に課題に対処しようと積極的に取り組むのである。対処的悲観主義者は、「行動を起こせば、悪い結果を避けることができる」と考えているわけで、それが「どうせダメだから積極的に行動しない」という絶望的な悲観主義とは大いに異なる点である。(抜粋)

最後に第3章のまとめとして

3-1 節:認知が感情に与える影響
3-2 節:感情が認知に与える影響
3-3 節:認知が行動に、そして行動が認知に与える影響

について解説したとし、そして

次節では、認知がそれまでもっている認知・感情・行動の傾向を強めてしまうということについて紹介する(抜粋)

として節を閉じている。

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