「気晴らしの効果、運動の効果」
坂本真士『ネガティブ・マインド』より

Reading Journal 2nd

『ネガティブ・マインド : なぜ「うつ」になる、どう予防する』 坂本真士 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

第4章 ネガティブ・マインドの調節
4.2 気晴らしの効果
4.3 運動の効果

落ち込んだ状態で一人考え込むと、ネガティブな考えが増幅しより落ち込んでしまう(第3章参照)。そのためまずは気分を正常化することが必要である。4.2節4.3節ではこの気分の正常化に役立つ「気晴らし」と「運動」の効果についてである。


気晴らしの効果

気分の正常化に役立つのが「気晴らし」=「他のことを考える、または何かの活動に従事することにより、問題から注意をそらすこと」である。
ここで、著者は「気晴らし」は、「思考抑制」=「問題について考えないように思考を停止すること」と違うと注意している。研究によると「思考抑制」をしようとすると、かえってその考えが活性化されるという。

気晴らしには、いろいろな種類がありそのすべてが良いわけでなく、気晴らしによって心身に悪い結果が現れることもある。

気晴らしの種類としては、

①.活動的気晴らし・・・運動、散歩、友人との会話、趣味活動
②.消費的気晴らし・・・飲食、買い物、喫煙、賭け事
③.受動的気晴らし・・・睡眠、テレビを見る、空想する、読書
④.衝動的気晴らし・・・高速での車の運転、薬物の使用
⑤.否定的気晴らし・・・自分以外の人や社会の問題に関心を向ける、別の気がかりについて考える

などがある。

ここで、「良い気晴らし」と「悪い気晴らし」を考えるために、もっと一般的にストレス対処する方法について考える。ストレスの対処法としては、「問題焦点的な対処」(=問題を解決する対処)と「情動焦点的な対処」(=ストレスの結果生じた落ち込み、不安、怒りなどを和らげる)がある。
ここで、「問題焦点的な対処」には、能力だけでなく相談相手の有無、問題解決に要するリソース(時間や金銭など)も考慮する必要がある。著者は、落ち込んだりしている時は自分で解決しなければならないと考えがちになるが、困った時にサポートしてもらえる人を作っておくことも大切であるとしている。また、「気晴らし」を行う際は、そのタイミングも大切であるとし、

こうしてみると、良い気晴らしになるかどうかを判断するためには、ストレスの質と量だけでなく、その問題を解決するために自分が利用できるリソース、そのときの体調、気晴らしのタイミングなどを考慮する必要があることがわかる。(抜粋)

としている。

気晴らしは、心身を回復させるための一時避難であるため、気晴らしをしている間は、問題から注意をそらしておく必要がある。気晴らしは一時的なものだからと、低い評価をする人もいるかもしれないが、気分一致効果を考えると、適切なやり方で木晴らしをして改めて問題に取り組むことは、落ち込みからの回復にとって重要である。


運動の効果

気晴らしのうち比較的有効だとされているのが「運動」である。運動は実験的にもうつからの回復に効果があることが分かっている。

運動の効果は、
①.生理的な変化・・・・脳内の神経伝達物質の増加、睡眠や生活リズムの改善
②.心理面の変化・・・・ネガティブな自己注目(第3章参照)の阻害、受動的・消極的になった行動や思考を活動的、積極手に変える

などである。

また、運動することにより落ち込みが止められるという成功体験よりうつへの対処する自己効力感(=自分がその行動をとることで望む結果を得ることができるという期待)が高まることで、うつに対して冷静に対処できるとしている。

では、どのような運動が適しているのか。手軽な運動として、ランニングとウォーキングはうつの低減に有益な運動とされている。運動の頻度については週三回でも効果があり、強度については中程度以上の運動で効果があるとされている。また、一回一五分から三〇分の運動でも生理学的な面を向上させ、うつの低減に十分だとされている。継続は力なりと言うが、多くの研究では、一〇週間以上の運動を行った場合に、うつ低減の効果を報告している。(抜粋)

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