「自己注目の始発」
坂本真士『ネガティブ・マインド』より

Reading Journal 2nd

『ネガティブ・マインド : なぜ「うつ」になる、どう予防する』 坂本真士 著
 [Reading Journal 2nd:読書日誌]

第2章 自己注目 — 2.3 自己注目の始発

前節では、「自己注目」と「うつ」の類似点について説明され、それをもとに自己注目とうつを①始動 ②作動 ③持続 の過程に整理した。これをもとに本節では、「うつ的自己注目」(①の始動)について説明している。この節では、いくつかの実験をもとに議論が展開されている。


まず、著者が大学生について行った調査を因子解析した結果が示される。この調査では、様々な状況で自己注目する度合いを調べている。その結果、特に「ポジティブ状況」、「ネガティブ状況」、そして「ひとり状況」での分布が興味深いとしている。

まず、ポジティブとネガティブ状況での自己注目であるが、結果からネガティブ状況では、自己注目しやすく、ポジティブ状況では自己注目しづらいとわかる。このことについて著者は、研究により明確な答えが得られていないとしながらも、次のように説明している。
まずネガティブな状況(落ち込み、不安)は、自分や自分の関連する事柄で何か問題がある場合が多い。そのため自分や自分に関連する事柄に目を向け(自己注目する)、情報を集めることが、ネガティブな状況から抜け出すのに役立つ。反対にポジティブな状況は、物事がうまくいっている状況であるため、自己について情報を集める必要があまりない。
この傾向が極端になった場合、つまり悪いことが起こると自分に原因を求め、良いことが起こったときに、自分のよい点に気がつかないことになり、うつにつながる。

うつ的自己注目の特徴の一つは、このような「ネガティブ状況の後に自己注目し、ポジティブ状況の後で自己注目を避けるのが極端になったパターン」なのである。(抜粋)

ここで、因子解析で「ネガティブ状況」と「ポジティブ状況」と共に問題となった「ひとり状況」での自己注目とうつに関して説明するために、著者は自己注目する状況についてクラスター分析(似たような回答をした回答群を見つけるもの)をした結果を示している。

その結果、「⑤ひとり自己注目群」は、他の四群に比べてうつの程度が目立って高いことがわかった。また、意外なことに、ネガティブ自己注目群の得点は平均レベルであり、他の群より決して高いものではなかった。(抜粋)

ようするに、ネガティブ状況では自己注目することが多いがうつとの関連は低く、一人自己注目状況のみうつとの関連が大きいということ。…(だと思う)つくジー


どうして「ネガティブ自己注目群」がうつとの関連が少ないかについて著者は、東洋的な「相互協調的自己観」と欧米的な「相互独立的自己観」をもとに次のように説明している。日本など東洋では、ネガティブな状況で自己に注意を向けて考えることで周囲との調和がはかられ、精神衛生的にプラスに働く可能性があり、反対にポジティブ状況であえて周囲に意識を向けることで、周囲に受け入れられ、結果的に精神的健康にプラスになる可能性がある。

「ひとり自己注目群」がうつとの関連が高かったことについては、この群の人は、一人で家にいる時や暇な時に自己注目し、物事がうまくいった時、楽しい時に自己注目しない傾向があるとしている。

自己注目も、よいことがあったときに自分をほめるような感じで自己に注目するならば、自己評価を高められるだろうが、この群の人たちは自分をほめるような自己注目ではなく、(ネガティブに)考え込んでしまう自己注目を、ひとりで延々と続けてしまう。後で詳しく述べるが、このような自己注目パターンは、うつを長引かせてしまう可能性が高いのである。(抜粋)

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