『餓死した英霊たち』 藤原彰 著 筑摩書房(ちくま学芸文庫)2018年
[Reading Journal 2nd:読書日誌]
はじめに
やっとこさっとこ、加藤陽子の『それでも日本人は「戦争」を選んだ』を読んだ。なかなか読み応えのある本だったが、著者が歴史学者ということもあり、幾つもの文献が紹介されている。
次に読む本は、どうしようと思ってみたが、何度も紹介されていた長谷部恭男の『憲法とは何か』などは、面白そうだが…難しそう、憲法だし。有名は、E.H.カーの『歴史とはなにか』なども難しそう、難しいって書いてあるし。いろいろと考えて結局、藤原彰の『餓死した英霊たち』を読むことにした。
今日のところは、「はじめに」である。
第二次世界大戦中の日本人の戦没者数は、三一〇万人である。そのうち軍人軍属の死者数は、二三〇万人とされている。本書ではこの軍人軍属の犠牲者の多くが、いわゆる「餓死」であったことを告発している。
この戦争で特徴的なことは、日本軍の戦没者の過半数が戦闘行為による死者、いわゆる名誉の戦死ではなく、餓死であったという事実である。「靖国の英霊」の実態は、華々しい戦闘の中での名誉の戦死ではなく、飢餓地獄の中での野垂れ死にだったのである。(抜粋)
戦死よりも戦病死の方が多い。それが一局面の特殊な状況でなく、戦場の全体にわたって発生したことが、この戦争の特徴であり、そこに何よりも日本軍の特質をみることができる。悲惨な死を強いられた若者たちの無念さを思い、大量餓死をもたらした日本軍の責任と特質を明らかにして、そのことを歴史に残したい。大量餓死は人為的なもので、その責任は明瞭である。そのことを死者に代わって告発したい。それが本書の目的である。(抜粋)
関連書:
加藤陽子(著)『それでも日本人は「戦争」を選んだ』朝日出版社 2009年
長谷部恭男(著)『憲法とは何か』岩波書店(岩波新書)2006年
E.H.カー(著)『歴史とはなにか』岩波書店(岩波新書)1962年
E.H.カー(著)『歴史とはなにか 新版』岩波書店2022年
目次 はじめ [第1回] 第一章 餓死の実態 1 ガダルカナル島の戦い [第2回] 2 ポートモレスビー攻略戦 [第3回]、[第4回] 3 ニューギニアの第十八軍 [第5回]、[第6回] 4 インパール作戦 [第7回]、[第8回] 5 孤島の置きざり部隊 [第9回] 6 フィリピン戦での大量餓死 [第10回] 7 中国戦線の栄養失調症 [第11回]、[第12回] 8 戦没軍人の死因 [第13回] 第二章 何が大量餓死をもたらしたのか 1 補給無視の作戦計画 [第14回] 2 兵站軽視の作戦指導 [第15回] 3 作戦参謀の独善横暴 [第16回] 第三章 日本軍隊の特質 1 精神主義への過信 [第17回] 2 兵士の人権 [第18回] 3 兵站部門の軽視 [第19回] 4 幹部教育の偏向 [第20回] 5 降伏の禁止と玉砕の強制 [第21回]、[第22回] むすび 解説 藤原彰『餓死した英霊たち』 一ノ瀬俊也 [第23回]
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